暮らしのコラム
もしもの災害時も食べ慣れた味で心身を癒やす、かんたんおいしいポリ袋クッキング
『溝の口減災ガールズ』

災害時にライフラインが止まっても、カセットコンロがあれば調理ができ、食べ慣れた味で疲れた心身をいたわることができます。一つの鍋で異なる料理が同時に作れるポリ袋クッキングは、水やガスの節約に役立ちます。『溝の口減災ガールズ』の江口可枝さんに、ポリ袋クッキングの説明と実演をしていただきました。

ふだんから常備品のローリングストックを心がけましょう

ローリングストックは、ふだん常備している缶詰や乾物などの食品を、
都度買い足して循環させていく仕組みです。
長期間保存できる防災食の備蓄も大切ですが、使わないうちに賞味期限切れにという体験はありませんか? 缶詰・乾物・レトルト食品は、どこの家庭でも常備しているもの。ふだん食べるものだから、使ったらまた食べる分だけ買い足すという仕組みがうまく回っていれば、家庭の常備品もいざというときの備えになります。
日頃使う缶詰(豆、ツナ、鯖、コーン、トマト缶など)、乾物(ひじき、わかめ、切り干し大根など)、保存しやすい玉ねぎやじゃがいもなどの野菜・りんごなどの果物を常備しておくことで、日常の食品がそのまま防災食となります。
参考: がんばらない、減災住まいづくりのすすめ 減災ファシリテーター 鈴木 光
私達『溝の口減災ガールズ』は、熊本地震で被災した益城町の方々への応援をきっかけに結成しました。益城町で被災した知人が、ライフラインが止まっている中で在宅避難をしながら友人家族と一緒に自宅の食材を持ち寄って食事をしていました。それがやがて地域で助け合うミニ炊き出しに広がりました。
「食べ慣れた味が、疲れた体と心を癒やした」という多くの方々の声を聞いて、日常の食事がいざという時の力になるのだと痛感しました。以来、私達はさまざまな場所で家庭の備蓄品を使ったポリ袋クッキングなどによる「ミニ炊き出しワークショップ」を行い、おいしく簡単な減災・防災のかたちをお伝えしています。
ポリ袋クッキングとは?

沸騰したお湯で、ポリ袋に入った食材を加熱調理します。
ポリ袋クッキングとは、食材と調味料を入れたポリ袋(高密度ポリエチレン)を沸騰したお湯で加熱するだけでおいしい料理が完成する料理法です。以下のように、在宅避難中の食事作りに役立ちます。
●家庭の常備品で簡単にできる
●残り野菜や備蓄品を上手に消費できる
●一つの鍋で複数のレシピが作れる
●ガスと水の節約になる
●衛生的
また、簡単なのでアウトドアの時にも子どもと一緒に楽しみながら調理ができます。さまざまなイベントでワークショップを行っていますが、毎回小さいお子様連れの親子が楽しそうに参加してくださっています。楽しくやったことが減災・防災意識として身に付いていくのがよいですね。今回ご紹介するポリ袋クッキングを、ぜひご家庭でも試していただければと思います。
用意する道具は、家庭によくある3つのアイテム!

①カセットコンロ ②深さのあるフライパンまたはお鍋(深いパスタ鍋が最適です)ポリ袋が直接鍋底に触れないように、フライパンまたは鍋の底にお皿を敷きます。

③高密度ポリエチレン袋(必ず「高密度ポリエチレン」または「湯煎調理可能」と記載された袋を使うこと)
①カセットコンロ ②深さのあるフライパンまたはお鍋、どこの家庭にもある2つの道具と③高密度ポリエチレン袋があれば簡単にできるのがポリ袋クッキングの特徴です。高密度ポリエチレン袋は、スーパーや100円ショップで入手できます。
カセットコンロはライフラインが止まってガスやIHコンロが使えない間の火力として活躍してくれますので、常備することをお勧めします。
ポリ袋クッキングで主菜・ごはん・デザートを作りましょう
今回は、主菜・ごはん・デザートの3品を一度にひとつのお鍋で調理します。デザートの甘みは、お子様はもちろん大人にとっても、心身共に疲れている時にホッと癒やしてくれる効果があります。
材料と作り方のレシピは上記からダウンロードしてください。
主菜「豚肉と野菜のカレー風味」

調味料も食材もふだん使うものばかり。
食材をはさみや手でちぎれば、まな板も包丁も必要ありません。

カットした食材と調味料をすべてポリ袋に入れて、袋を揉んで混ぜ合わせます。

ポリ袋から空気を抜いて、先の方で口を結びます。
よく火を通したい魚や肉・野菜があれば、具材を平らに広げてから口を結びます。
ごはん「炊き込みご飯」

とりささみは、そのままサラダにも使えるパウチの常備品を使いましたがツナ缶などに置き換えてもOK!
野菜も冷蔵庫にあるごぼうやれんこん、乾燥野菜などの常備野菜を活用してください。

材料と調味料すべてをポリ袋に入れます。米は特に洗わなくても大丈夫です。

ポリ袋を揉んで、材料と調味料と混ぜ合わせます。

空気を抜いて、先の方で口を結びます。
デザート「りんごのコンポート」

砂糖の代わりにはちみつを使うとしっとり仕上がります。

りんごは薄めのくし切りにすると火が通りやすくなります。

空気を抜いて先の方で口を結べば完成。
柔らかめが好みならば、加熱時間を長くします。
調理は全部まとめてひとつのお鍋で!

具材を下準備した3レシピのポリ袋。

今回は直径26cm×深さ6センチのフライパンを使いました。
鍋底にお皿を敷くのをお忘れなく!

ポリ袋が鍋肌に触れないように、中央に袋のしばり口をまとめておきます。
沸騰したお湯にポリ袋を入れて、再沸騰してから加熱時間を計ります。
それぞれ加熱時間の半ばで、ポリ袋をひっくり返すとまんべんなく火が通ります。
ポリ袋は時間差で取り出していき、お皿に盛りつけていただきます。災害時には紙皿にサランラップを敷いてから料理を盛れば、食後はラップだけ捨てればいいので紙皿の節約・ごみの軽減にもなります。1つのお鍋で3つの料理が同時に調理できるので、カセットガスも水も節約できるポリ袋クッキングは、災害時の強い味方となってくれるはずです。
3品の出来上がり

「豚肉と野菜のカレー風味」豚肉も野菜もしっとり柔らかく仕上がりました。

「炊き込みご飯」ごま油により‘もちっと感’があります。

「りんごのコンポート」心身が疲れている時は甘味があるとホッとします。
めんつゆやシンプルな塩・胡椒・砂糖・カレーパウダーを使ったので、レシピの味付けで失敗することもありません。お友達家族と一緒に、いろいろなアレンジレシピを考えてみるのも楽しいですよ。時々、賞味期限が切れそうな常備品を持ち寄ってポリ袋クッキングご飯会をしてみてはいかがでしょうか。
災害時でもふだん食べ慣れた味が心を癒やしてくれる

『溝の口減災ガールズ』が企画・監修・協力した冊子や商品。
レシピ協力した冊子『おいしいミニ炊き出しレシピブック』、
神奈川県川崎市高津区の『減災ワークショップガイドブック』(高津区のHPからダウンロードできます)、
ポリ袋にレシピを印刷した「減災レシピジッパー」。
災害はいつどこで起こるかわかりません。そのためにも備えだけはしっかりと、そして楽しくおいしく。ふだん食べ慣れた味の温かい食事が、きっと明日への希望と活力を与えてくれるはずです。ぜひローリングストック方式の備蓄とポリ袋クッキングをセットで習慣付けていただければと思います。
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記事監修:溝の口減災ガールズ
あとがき

溝の口減災ガールズ
2016年の熊本地震をきっかけに、神奈川県・溝の口近隣マンション在住の女性達が立ち上げた団体。「食べ慣れた味が体と心を癒す」「ミニ炊き出しの発想」という観点から、ローリングストックを結びつけた料理法の参加型ワークショップを行う。その他、災害時のトイレ作りワークショップ、ハザードマップを取り入れたワークショップなども。防災訓練に限らず、地域のコミュニティ作りや学校教育など幅広い観点からの依頼に応えている。フェリシモの「防災セットきほんのき」とコラボレーションした「減災ジッパーレシピ」を提供。『おいしいミニ炊き出しレシピブック』(2018年6月)を発刊。2020年10月には、高津区市⺠提案型協働事業として『溝の口減災ガールズ』が企画・監修した『減災ワークショップガイドブック』を発刊。