住まいとお金
人生100年時代に考えたい住まいとマネープラン
ファイナンシャルプランナー 高山 一惠

これから住まいの購入を検討したいという時に気になるマネープラン。借入可能額や月々のローン支払額だけにとらわれるのではなく、購入後に必要なランニングコストや住宅ローン控除などの長期的視点で考えたいポイントがあります。マネープラン全体と注意すべきポイントについて、ファイナンシャルプランナーの高山一惠さんにアドバイスしていただきました。

戸建て住宅を購入するとどのような費用が必要?

一例ですが、住宅ローンを利用して一般的な新築戸建て住宅を購入する場合には上記のような費用があります。土地と建物の費用だけでなく諸費用も必要ですし、住宅ローンを利用する場合は融資に関わる諸費用も必要となります。 住宅に欠かせない火災保険料・地震保険料については、以前の記事でご紹介していますのでそちらもあわせてご覧ください。
30代共働き夫婦—住まい購入のためのマネープラン例

夫32歳 会社員(年収約600万円)・妻32歳 会社員(年収約400万円)・長女6歳
物件の購入価格6000万円/諸費用300万円(物件価格の5%)/頭金1200万円(内貯蓄500万円・住宅資金贈与700万円)/
住宅ローン借入金額4800万円/金利0.5%(変動金利)/借入期間35年/元利均等/
月々の返済額9万8642円・ボーナス月返済額(6月・12月)15万5899円
※給与の増額想定なし ※金利変動の参入なし ※年収は夫婦合算の手取り約750万円で算出
たとえば32歳の共働きご夫婦(長女6歳)が、総額6,000万円の新築戸建て住宅(土地代2,500万円+建物代3,500万円)を購入した場合のマネープランをシミュレーションしてみました。
お二人の貯蓄500万円と住宅資金贈与700万円の合計1200万円を頭金とし、住宅ローンの借入金額は4800万円。頭金は多いほど助かりますので、それぞれの親や祖父母からの支援による住宅資金贈与を活用します。
毎月の住宅ローンの返済額は9万8642円、ボーナス月の返済額(6月・12月)15万5899円。繰り上げ返済などを上手に活用しながら、完済後の生活も組み立てましょう。住宅ローンの金額を毎月の手取り金額の25%程度に収めることで家計負担が少なく、お子さんの教育費を支払った場合でも老後も無理なく暮らしていけます。またご夫婦が共働きで定年まで働き続けることで、(現行の年金制度が続くとすると)基本生活をする上では問題なく暮らせるだけの年金がもらえることがわかります。老後まで考えると、80歳代半ばから介護費用が必要になってくるとみておくとよさそうです。
企業にもよっても異なりますが将来の先行き不透明な現在では給与が上がらない可能性も高いため、最近は給与が上がらなかったとしても、住宅を購入しても家計が破綻しないかどうかという観点でキャッシュフローを考えておくとよいでしょう。このようにマネープランを考えていくと、人生を俯瞰して長期的視点で考えることができます。
住宅ローンの審査基準にも注意を

マネープランイメージのように、何歳位で家を買うのが最適なのかもあらかじめ検討しておきたいものです。金融機関が住宅ローンで融資を行う際には、上記のような審査項目を設けています。1位が「完済時年齢」となっており、同調査では「80歳未満」までに完済できるかどうかを審査基準としている金融機関がほとんどです。「借入時年齢」も4位にあることから、完済時の年齢まで考慮してなるべく若いうちに住宅ローンを組んだ方が、住宅ローンの審査基準に通りやすいと言えそうです。
また審査項目の上位には記載されていませんが、過去にクレジットカードの返済遅延があったなどの個人信用情報に関しても融資の審査に不利となりますので注意が必要です。
住まいもマネープランも、これからは人生100年時代

人生100年時代の暮らしを支える住まいとマネープランの重要度がさらに高まります。
内閣府の「令和4年度高齢社会白書」(※3)によると、2021年の男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年。近い未来に先進国では半数の人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」を迎えると予測されています。マネープランも90〜100歳代まで見据えて考えておく必要がありますし、住まいもまた100年時代にふさわしく耐久性にすぐれた高品質な建物であることが必要とされます。
(※3)内閣府「令和4年度高齢社会白書」 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/04pdf_index.html
何を重視するか?購入vs賃貸
—老後の生活の支えとしても—
住まいは購入がいいのか賃貸がいいのかという話題によくなります。どちらがお得かということだけに注目するのではなく、「自由に住まいをカスタマイズしたい」「気楽に住み替えたい」など、その人が何を重視するかというライフスタイルを重視しつつ、頭金の貯まり具合、金利の状況、税制優遇制度などを総合的に考えて選ぶのが良いと思います。
最近は、住まいを老後の資産として考える方もいらっしゃいます。人生100年時代になると、老後資金がショートする可能性も増えてきます。住まいを所有していれば、老後の住宅費がかかりません。また、万が一の場合として住まいを売却して将来の老人ホームへの入所費用にしたり、人に貸して賃貸収入を得たりすることも考えられます。ただし資産として活用するためには、高品質な住宅をきちんとメンテナンスしていく必要があります。
固定費削減はマネープランの基本
①住宅ローンは一度借りたら終わりではない —繰り上げ返済や借り換え—

最初の返済計画通りコツコツと返済していくだけが返済方法ではありません。
住宅ローンは一度借りたら終わりではありません。住宅ローンの控除期間が終わったら、繰り上げ返済や金利の低い金融機関での借り換えも検討して、返済の負担を減らすように心がけましょう。金融商品は変化が激しいので常に金利動向によっては、より良い商品に乗り換えたいものです。
また多くの方が利用する『元利均等返済』の住宅ローンの場合、返済期間の前半の方が利息の割合が大きいため、住宅ローン控除期間が終わったら早い段階で繰り上げ返済を行うのがおすすめです。ただし注意したいのは「繰り上げ返済貧乏」に陥らないこと。どんどん返済に充てて手元に貯蓄がなくなってしまっては本末転倒です。購入後は貯蓄と返済の2軸でマネープランを考えたいですね。
②住宅は一度買ったら終わりではない —将来のランニングコスト削減—

戸建て住宅のメンテナンスは、いわば住まいの健康診断。
気付かない箇所を専門家にチェックしてもらうことで住まいを良好に維持できます。
戸建て住宅は、屋根・外壁・バルコニー・外部建具・水回りなどの定期点検や適切なメンテナンスを施すことで長く住むことができます。住宅も買ったら終わりではなく、購入後のアフターサービスやメンテナンス計画をしっかり提供できるメーカーから購入することも重要です。初期投資が多少かかっても、長く安心して住めるのならば、将来の負担やランニングコスト軽減にもつながります。将来のメンテナンス費用を抑える高機能な外壁や屋根材などを採用している住宅もあります。住まい選びの際にはメンテナンス費削減のための初期投資として、建築時に見えない部分にも気を配りたいものですね。
特に高断熱・高気密住宅の場合には冷暖房機器を効率的に使うことができたり、太陽光発電や蓄電池搭載住宅の場合には自宅で発電した電気を使う・貯めることができたりと、毎月の固定費である光熱費の削減が可能です。高性能な省エネ住宅に初期投資して、長期的なコストダウンを考えるというのもひとつの方法です。
③税金控除も活用しましょう

住宅ローン控除期間がいままでの原則10年間から原則13年間となりました。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、「令和4年度税制改正大綱」により、新築の場合原則13年間の控除期間(控除率は0.7%)となりました。さらに省エネ基準適合住宅やゼロ・エネルギーハウスなどの環境性能に優れた新築住宅は、より最大控除額が大きくなるなどの優遇措置が拡充されています(※4)。
また、住宅購入資金には住宅資金贈与の特例制度も利用できます。環境性能に優れた住宅は、通常の住宅よりも非課税となる贈与の金額が大きく1,000万円までの贈与は非課税となっています。贈与などの家族からのサポートを最大限に活用して頭金に充てることで、その後の返済計画も楽になります。長期に渡って家計を助けてくれる控除や非課税措置などは、しっかりと勉強して取り入れていきましょう。
(※4)本項は、2023年2月時点の情報を基に作成したものです。
ライフプランに合わせて長期的視点で考えたい

人生の目的やライフプランは、人によってさまざまです。ご自分の望みを優先して、その実現のためのマネープランを長期的視点で考えていただければと思います。
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記事監修:ファイナンシャルプランナー 高山 一惠
あとがき

ファイナンシャルプランナー/1級FP技能士 高山一惠さん
株式会社Money&You取締役。女性向けに一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場 FP Cafe®を運営。
全国で講演活動・執筆活動を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。テレビ、雑誌などのメディア出演・寄稿、著書多数。『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)はこれまで出版してきた著書と合わせて累計85万部を突破。新刊共著に『はじめてのNISA&iDeCo 改訂版』(成美堂)がある。
株式会社Money&You https://moneyandyou.jp/